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家の食器棚の一番手前に収納されていて、必ず1日に一度は手に取るうつわ、物心ついたときにはわたしの手に収まっていたうつわ。。。それは、ご飯を食べるための茶碗。。。

「飯わん」ではないでしょうか?

「どの家庭でも必ず、家族の人数分の飯マカイ(茶碗)だけは揃っていて欲しい。だから私は、選ぶ人がそれぞれ満足できるように、多種多様のマカイを作り続ける。幾つになってもね。それは、陶芸家の基本だね」
沖縄県読谷村 陶眞窯代表者 相馬正和氏はこう仰います。
 
 


沖縄では焼物のことを「やちむん」といい、最近はこの沖縄独自の呼び方が全国でも固有名詞として定着してきました。

沖縄では食文化に基づいた伝統的なうつわの形が伝わっていて、今も生活に溶け込んでいるものが多々あります。

先に紹介したマカイもその一つです。

口径は広く、緩やかなカーブを描くやや浅めの胴体、高さは低いですが、しっかり指が引っかかる安定した高台。

基本的なこのデザインから発展して、さまざまなマカイが生まれます。
茶碗の広がった口の内側に絵付けされたものも多く、一層賑やかで美味しそうに見えます。




相馬氏の言葉通り、いつ訪ねても工房の陳列棚にはたくさんの飯碗がズラリ。
いや、ご飯にこだわらずとも食卓で使いやすそうなマカイが揃っています。絵柄のパターンが豊富で、サイズもいろいろ。

「汁マカイ」とよばれる具の入った汁物を入れる深めで丸みある茶碗。これはボールといった方がよいのかも。

ソーキそばを食べる丼碗のことを「そばマカイ」といいますが、サラダや煮物の盛り鉢にしても合いそうです。
町の食堂に行きますと、小さなマカイにはおかずが載せられています。
使い方は、なにも子供用やダイエット用の飯碗だけに限りません。
全国にこれだけの種類の茶碗があるのですから、割れるまでトコトン「わたしの飯茶碗」を使い続けるのはもったいない気がして、私はその日の気分やおかずのお皿などによって、飯茶碗を自由に選ぶ「ローテーション茶碗」を実践してきました。
このほうが、頻度にバラツキがでて、愛用の茶碗が長持ちします。そして、なにより飽きがこないし、新鮮な気持ちで美味しく戴けます。かやくご飯が美味しそうに見える茶碗、お茶漬けにぴったりの茶碗。。。

日本語には「よそう(装う・粧う)」という古の美しい言葉があります。これは服を着たり、化粧をしたりして外観を美しく整えるという動詞の他に、うつわに盛る、お汁を注ぐという意味にも使われます。
あたかもうつわに美しく盛りつけるために、心を込めて二度、三度と盛り重ねるような礼儀作法の意味も込められていると思います。

茶碗は使い比べると、選び方に変化が現れます。弊店で取り扱う茶碗をいくつか紹介しながら、それぞれの茶碗が持つ特徴を見つけてみましょう。

 
前回ご紹介しました小石原焼で作られた茶碗です。

リズミカルな装飾は「飛びかんな」と「刷毛目」どっしりと安定感があって、口縁から高台への丸みのあるデザインは、欠けにくく丈夫です。

ご飯はもちろん、お茶漬け、具のたくさん入った豚汁やスープなど熱いものをよそっても手に温度が伝わりにくく、慌てなくても安心です。


 
写真のように深さのある茶碗をいろいろ並べてみました。
さまざまなデザイン、質感がありますね。
小盛りの丼として、卵とじや煮麺などを頂いてもよいのです。作家によっては「多目的碗」という名前で研究している人もいらっしゃいます。

写真だけではうつわの重さや、「手取り」ともいわれます「持ち心地」まではお伝えすることはできません。
やはり自分で手にとって納得するものを選んで頂くのが一番です。

そしてもうひとつ質感と書きましたが、焼物の世界ではとても重要な要素です。
焼物は大きく磁器と陶器に分けられますが、使われている素材の成分が違います。
 



磁器は石ですから、白く硬質です。
「天草陶石」という上品質の磁土が採れる熊本県天草市の陶芸家江浦久志さんは、「天草陶石の持つ良い性質を十分に引き出した、さまざまな白いうつわを作りたい」と仰っています。青みがかった白、柔らかなアイボリーの白。。。
白いうつわにもさまざまな白があるのです。白に映える藍色の「染付」は、シンプルなだけにに奥が深い組み合わせです。

この江浦さんの茶碗は、18世紀頃に九州で作られていた「広東碗」の形が基になっています。
薄く朝顔型に開かれた口径、直径に対して高台は高く、裏を返すとしっかりと深く削ってあります。
食卓にあると凛として、品格が高いこの形にはちょっとしたエピソードがあります。
九州有田焼、波佐見焼、愛媛県砥部焼などの主な磁器産地には、「くらわんか茶碗」とよばれる茶碗のルーツが遺っています。
船を使った河川輸送が主流だった江戸時代頃、船上でモノを売買する移動商店も現れ、茶店や飯屋よろしく「食らわんか~」と掛け声をかけて客寄せしたのです。
そのとき、ご飯や酒などをよそって渡した茶碗のことを特に「くらわんか茶碗」と名付けました。水上ででも、動きながら片手で支えられて、飲食できる安定感のある丈夫な茶碗が重宝されたのでしょう。
「広東茶碗」の形が砥部焼で作られるようになり、有名になるといつしか「くらわんか茶碗」とよばれます。
それから磁器の産地はみな、この形のくらわんか茶碗を作るようになったのです。誰が言い出したかはわかりません。

ざっくりした土味といえば、やはり土物のうつわですね。

使えば使うほどに水分や食材を吸って、馴染んだ味わいがうつわの表情として滲み出てきます。
原土に近い粒子の粗い土を自分の手で精製して使う作家は珍しくありません。

失敗も多いですが、個性も強く現れ、なによりも土に含まれた雑味がどのように変化していくのか。
そこが楽しいのだと思います。
 
 








写真の茶碗より「陶眞窯」の茶碗は、沖縄の中部にある屋嘉(やか)という地域で採れた土です。
鉄分が多くて黒く胡麻のようにでています。彫り込まれた唐草模様が陰影を作っています。

「太朗窯」は石垣島の最北端にあります。島は石灰分と鉄分がたくさん含まれた隆起した土壌です。
ザラザラの表面に白化粧を施し、飛びかんなの模様が刻まれています。
沖縄の古陶にある飛びかんな技法は、中国からもたらされたようですが、太朗窯さんのは小鹿田の職人が読谷村を訪ねたときに修業先の窯で習ったそうです。
ガラス質が混ざった荒々しい土は、登り窯で焼成されて焼き締まり一層複雑な色合いを見せています。
木俣さんの女性らしい柔らかな絵付との調和が素敵な茶碗です。

漆器やガラス器、錫などの金属器までも・・・素材が変わり、作る人が変われば、世の中にはまだまだたくさんの茶碗がありますから、作った人がどのようにデザインして制作したのか想像しながら、決まった用途にこだわらず、まずは使ってみてください。

これから茶碗を選ぶときに、どうぞお気に入りの一客が見つかりますように。